大室山

・期間  2004年3月21日(日)
・山域  大室山(西丹沢)
・形態  単独・日帰り 周回コース
・行程  用木沢出合→犬越路→大室山→加入道山→白石峠→用木沢出合

※ 3年前に大倉から入山、丹沢主脈を歩いて犬越路から大室山への縦走を計画したが、膝の負傷で檜洞丸で敗退した。忘れ物を取り戻しに行くつもりで、西丹沢の地味な山、大室山へ向かった。

3/21(日) 晴
 自宅(5:10)→用木沢出合(7:30-8:00)→犬越路(9:20-9:40)→大室山山頂(11:10-11:30)→加入道山(12:30-13:20)→白石峠(13:35)→用木沢出合(15:10)→自宅(20:00)
 春の兆しが聞こえてくる。桜の開花がここ何十年間で最も早いとか?・・・、でも昨日の冷雨、関東の山でも雪が降った。最後の雪遊びを楽しみに、西丹沢の大室山へ向かった。
 用木沢出合まで林道を車で進むと先客は4台、何とか隅っこに潜り込ませた。昨日は冷犬越路のベンチ雨だったが、今日は暖かで申し分ない。桜花の咲く時期に新雪を踏むために、ここ西丹沢にやって来た。淡い緑に白い雪・・・、そうではなく、忘れ物を取りに来たのである。丹沢を東から西まで縦走することを計画したのが3年前、最初は順調だったが檜洞丸の手前で膝を壊してしまい、後半の大室山が残ってしまったのである。
 用木沢の渓らぎの音と若い緑の木々、遥か稜線に目をやれば朝の元気な太陽大室山は雲の中が新雪を眩しく照らしている。『ああー、山はいつの季節も私を爽やかに迎えてくれる・・・、』そんな気分に浸れたのは、歩き始めて30分までであった。
 どうしたことか?腹の調子が悪い。下腹部が”グー、ピー”と鳴り出した。昨夜、酒は程々に切り上げた筈なのに、肛門の括約筋の頑張りが限界に達した。藪の中へ脱兎の如く直行した。
 幸い周りには誰も居なかった。何とか無事にキジ打ちを済ませて、薄く積もった新雪を踏みしめ、犬越路まで登り詰めた。サンサンの太陽に雪を纏った木々が眩しく光っている。
 避難小屋で小休止しようと扉を開けると、先客が食事中であった。小学生2人を連れた4人家族に犬1匹のパーティに、「一人で何処までですか?」と聞かれる。『雪のトンネル大室山から加入道を回って来ます。』と答える。「私達も同じコースなんですが、これから先に行けますかねー・・。」と父親、家族の服装・装備を見ると父親だけは、まともな格好をしているが、奥方様とお子様達はハイキング程度の軽装である。『奥さんと子供達、その格好じゃー、チョッと厳しいと思いますよ。』と私、「そーですか。子供達の靴も濡れてるし、このまま帰ります。」と父親、見れば子供達の足元はスニーカーである。”そーそー、無理しても、ロクな事はない。それが正解ですよ。”と、心の中で呟いた。
 この時期にしては、結構な雪である。ふわふわの登山道を一人で登富士山って行くと富士が見える稜線に差し掛かった。雨雲が邪魔してるが、富士の崇高さは変わらない。
 ”いつ見ても何処で見ても富士山は良いね。富士は登るものではなく、眺めるものだね。”が持論の私、この眺めは何とも言えない。
 再び視界のない樹林へ潜り込んだ。雪も多くなり、犬越路で出会った家族のことを思い出した。この程度の雪でも、しっかりした装備じゃないと、とんでもない事になってしまうのが山である。
 登山道が傾斜を増してくると、前方に稜線大室山山頂が見えてきた。ふわふわの雪を踏んで最後の急坂を一登りで、大室山への分岐に到着した。山頂へは平坦な道を東へ10分も歩けば到着する筈である。春は真っ白な花を咲かせる”八潮ツツジ”の木々が、今日は白雪の花を見事に咲かせている。雪のトンネルを抜けると平坦な大室山の山頂に到着した。
 道標が無ければ山頂と分からない何の変哲もない只の広場である。しかも周りの木々で眺望もない。唯一、北側の赤鞍ヶ岳と菜畑山、道志の集落が俯瞰できるだけである。
 しかし、人間だけは別であった。山頂のベンチで中高年のパーティが酒を酌み交わしながら、昼食の準備をしている。私もここで昼飯でもと思ったが、騒々しいパーティの脇でラーメンを作って食ったところで旨くも何ともない。昼飯は加入道山まで我慢することにして、軽い挨拶を交わしてから、少し離れた場所にザックを降ろして煎餅を齧った。
 タバコに火を付けた。青白い煙が冷たい空気の中に消えて行く。贅沢な一時蛭ヶ岳(左)と檜洞丸(右)には一服は欠かせない。
 大室山から加入道山へは稜線を西へ1時間の行程である。適度なアップダウンがあり、登り一辺倒より楽しく歩けた。途中、前大室の手前で南側の視界が開けて、檜洞丸から蛭ヶ岳が鈍く青白く光って見えた。
 加入道山に到着した。ここも展望がない地味な山である。ベンチには先客の青年が一人で昼飯の準備をしていた。ベンチの片側半分を拝借して、私も早速に昼食の準備に取り掛かった。「大室山まではこんな感じですか?」と彼に雪の状態を聞かれた。『ええー、ズーッとこんな感じですよ。』と返すと、彼の顔が暗い諦めの表情に変わった。『用木沢出合から白石沢を登って来たんですか?』と私が訪ねると、コンビニの幕ノ内弁当を食べながら、「エエー・・」と言って首を縦に振った。
 ストーブに乗せたコッヘルの蓋がカタカタと音をたて始めた。ラーメン投入の合図である。いつもの袋麺を取り出して沸々のお湯にドボンと投入、待つこと3分で熱々のインスタントラーメンの出来上がりである。さー食べようと思ったが、箸を忘れたことに気が付いた。”エーィ・・仕方ない、ゴメンネ。恨まないでね。痛いけど少しの我慢してね。”と合掌して、木の枝をポキリと折ってインスタントの箸を作った。
 青年は軽い会釈を残して、白石峠へと下って行った。此処まで来たんだから大室山まで足を伸ばせば、もっと充実した山歩きが出来るのに・・・と思ったが、私が悔やんでも仕方ない。彼の判断である。無理は禁物、それが山登りである。
 お腹も一杯になったし、未練もないし、時間はタップリ残っているし・・で、ゆっくりと白石峠へ向けて歩き出した。10分の下りで白石峠に到着、ここから更に稜線伝いに進むと畦ヶ丸への道となる。”畦ヶ丸はまた今度ね。待っててよーー。”
 峠から白石沢の急な斜面を慎重に下って行く。途中に”白石”の由来・薀蓄が書かれた看板があった。道標もキッチリと無機質に光っている。周りの木々が人工的に整備された檜や杉林に変わると、道も乾いたハイキングコースとなった。
 早く温泉へ!・・いざ温泉!へ・・・、用木沢出合へと平坦な林道をポクポクと下って行った。

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犬越路 檜洞丸 雪の花を咲かせた八潮ツツジ 雪の登山道