巻機山


・期間 2019年11月2日(土)晴れ
・山域 新潟県
・形態 単独・ピストン
・行程 桜坂登山口→(井戸尾根)→巻機山→(井戸尾根)→桜坂登山口


※ 近くて遠かった巻機山、快晴の下、絶景と紅葉を満喫しながらゆっくり歩いた。

 桜坂登山口(6:40)→5合目(7:45-7:55)→6合目(8:40-8:50)→7合目(9:50-10:05)→ニセ巻機山(10:55-11:05)→巻機山(11:40-11:55)→最高点(12:05)→避難小屋(12:35-13:30)→7合目(14:10-14:20)→5合目(15:00-15:10)→桜坂登山口(15:50)


日本の多くの山は、信仰の対象とともに数々の伝説を秘めている。

巻機山もこの例に漏れず機織りの女神である“巻機姫”に由来すると言う。

姫を祭った山ならば、その山容は優美な曲線を描いているはずだが、

お姫様の御姿を拝謁する道のりは中々の体力と根性が必要だった。

越後国境の100名山に三連休の初日に登った。


桜坂登山口の駐車場


登山口の案内板
 金曜日の仕事を終えて愛車に乗り込んだ。
 越後へ向かってアクセルを踏み、エンジンを止めたのは塩沢石打SAだった。

 今夜の宿となる駐車場は割ほどの車中泊仲間で埋まっていた。
 
 最近はお陽さまが昇ってからゆっくりと動き出すことが多くなってきた。
 夜明け前から行動するのは何年ぶりだろう。

 清水集落から林道を左に折れて桜坂の駐車場に入ったのは6時前なのに、登山口に近い駐車場は既に満車だった。
 仕方なく第4と書かれた場所まで車を戻すと、次から次と後続車が入ってきた。

井戸尾根コースへ


落葉樹の中を登って行く
 新調したばかりの秋用のアウターを着込んで歩き出した。

 井戸尾根を示す案内板を右に進み、10分ほどして体が温まってきた頃、左手の藪の中で大きな動物がガサガサと動く音が聞こえた。

 一瞬“クマ”の二文字が浮かんだ。
 立ち止まって身構えていると、茂みをかき分けて現れたのは紺色の作業衣を着た“キノコ狩り”の男性だった。

 俺って元来が臆病なのでビックリさせないでねと、お願いしても、彼にしてみれば、山の恵み収穫に来ている訳で、遊びで山に入っている連中など気にはしていられない。

 「どんなキノコが採れるんですか?」と尋ねると、聞いたこともないキノコの名前を告げられ「今年は全然ダメだね。」と落胆した様子だった。

 登山道の先を歩く女性が奥さんだと言う。
 長靴を履きパープル色の雨具を着込んだ奥さんに追いついて彼女が背負っている籠の中を見せてもらうと、美味しそうなキノコが並んでいた。
 
 “キノコの夫婦”とは合目の手前で別れて、ブナとミズナラが混在する樹林帯を一人で登って行った。

5合目で一休み


米子沢が綺麗に見えた
 登山道の傾斜が強くなり15分ほど我慢すると、視界が開けた場所に出た。

 ここが5合目だ。
 多くのガイドブックで紹介される場所で米子沢が正面に見え、左奥にはニセ巻機山の丸い頂きが朝陽に輝き、今が盛りの紅葉の稜線に空の碧さが映えていた。

6合目から見た天狗岩とヌクビ沢
 次の休憩を6合目と決めて、適度な傾斜の道を歩き出した。

 合目は地図に“絶景地”とあるとおり、その期待を裏切らなかった。

 朝陽を浴びた天狗岩が割引沢とヌクビ沢を断ち切るように屹立していた。
 
 1合を登るのに1時間、このペースだとここからテッペンまで4時間かかるの?・・・まー良いか!


関越国境の山々(中央の三角の山が大源太山)

 周りの木々が低くなり前方に露岩帯が見えてきた。

 座り心地の良さそうな露岩の上に数人の登山客が腰掛けていた。

 俺も休もう。
 ここからの景色も中々である。
 南側には関越国境から苗場方面の山々が目の前に浮かび、大源太山の鋭い三角形が際立って見えた。


真新しい8合目の標識


先行者を追って階段を登る
 合目から先は森林限界になり、尾根に続く道は階段になった。

 小休止したとはいえ階段の急登は体に堪える。
 “還暦を過ぎてから登る山じゃねーよなー!”とボヤキながら、合目の標識を横目に、先行者の後を追って休み休み登って行った。

 
ニセ巻機山に着いた


巻機山の稜線(右側の盛り上がりが最高点)
  合目から時間でニセ巻機山に着いた。

 前方には谷を挟んで緩やかな山容が見え、稜線上を幾人もの登山者が行き交っていた。

 右手の盛り上がった場所が頂上だろう。

 単独の女性が声を掛けてきた。
 「大源太山は何処でしょうか?」
 俺は南側を指差して
 『あの三角の尖った山ですよ。』
 と言うと、今度は西側の遠くに浮かぶ山影を差して
 「あの山は何でしょうか?」
 と聞くので
 『さー、どこの山かなー?』
 って頭の中の地図を探ると

 傍で一服していた初老の男性が
 「妙高と火打ですよ。」
 と代弁し、続いて反対側の山から反時計周りに
 「あれが皇海山、左手には至仏山があるはずなんだけど?・・・、鳥兜山があそこで、佐武流山がその隣かな?苗場山は陰に隠れて・・・」
 と、二人してこの男性の山座同定に付き合わされる羽目になった

 
巻機避難小屋


池塘の脇を通って頂上へ向かう
 ニセ巻機山から谷筋に下ると避難小屋が建っていた。

 真新しく綺麗な室内には、早くも宿泊予定者のシュラフが並んでいた。

 昼飯は山頂まで我慢しよう。
 避難小屋を後にして最後の登りを急いだ。

 途中の平坦な場所には池塘があり、その奥に割引山のピークが控えていた。

巻機山の山名標


北側に見えた越後三山
(左から八海山、越後駒ケ岳、越後中ノ岳)
  登山者で賑わう稜線上の広場に着いた。

 ここはニセ巻機山から見えた山頂ではないが、“巻機山”と刻まれた柱が立ち、ベンチでは昼飯を広げたグループが歓談していた。


 俺は誰も居ない北側に移動して、タバコを片手に目の前に広がる山々を眺めた。

 紅く染まった八海山の山肌、それに続く越後中ノ岳、その奥に越後駒ケ岳の秀峰が目線と同じ高さで並んでいた。

 眼下には魚沼盆地の中央を魚野川が大蛇のようにうねり、遥か遠くの米山や弥彦山まで見渡せそうだった。


 巻機山の最高点は、ここから東側に向かった小ピークだ。
 僅か10mほど高いだけだが、ここまで来たんだからテッペンまで行ってみよう。


草紅葉の中を歩いて最高点へ向かう
 水平の道を少し歩くと、草紅葉の中に池塘が浮かんでいた。

 その先には、お椀を伏せたような丸いピークが青空に映え、秋の山ならではの景色に暫らく見とれてしまった。

 

最高点のケルン


日光・尾瀬方面の山々
 山名標の立っていた広場から10分で最高点に到着した。

 三角点を期待したが、そこは石を山積みにして木枝を差し込んだケルン状の代物があるだけだった。

 先程の広場では見えなかった東側が開けて、日光・尾瀬方面の山々が綺麗に並んでいた。

 風が出てきた。
 この場所に居続けても仕方ないので引き返すことにした。

 
避難小屋へ戻る途中から見た池塘と割引山
  広場まで戻ってきても、風は吹き続けていた。
 
 “乾杯の儀”と“午食の儀”は避難小屋の面前で執り行うことにしよう

 
避難小屋の前で乾杯
  午食を終えて一服していると、大きなザックを背負った若者が避難小屋の前からテン場の方へ下って行った。

 彼の凛々しい姿が若い頃の俺と重なって“俺も昔はそうだったんだよ。格好いいじゃん!”と叫びたくなった。
 
8合目の階段を下る
  休憩もタップリとったし、下山することにした。

 ニセ巻機山まで登り返して四周の眺望を目に刻み、7合目まで下って一休みした。

 彼の凛々しい姿が若い頃の俺と重なって“俺も昔はそうだったんだよ。格好いいじゃん!”と叫びたくなった。
 
ニセ巻機山を振り返る


ブナの林を下る
  合目の手前でデカザックを担いで登ってくる若いカップルと擦れ違った。

 この連休は天気の心配はないという。
 テン場には幾つものテントが並ぶに違いない。
 若いカップルの“愛の巣”を思い浮かべながら、駐車場までの道を下って行った。

 
駐車場から見上げたヌクビ沢と割引山
  駐車場まで戻ってくると、管理人の親父が領収書を片手に手招きしていた。

 “分かっていますよ。料金はキッチリとお支払いますね。”
 目線を上に向けると、親父の背後には、錦色に染まった割引山のピークが青空の中に浮かんで見えた。

 もう直ぐ陽が沈む時刻だ。
 スマホの地図アプリをタップして“近くの日帰り温泉”と入力すると、帰りのルート沿いに丁度良い温泉が表示された。

 ナビにセットして、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ