八甲田山
・期間 2007年7月29日(日)
・山域 八甲田山(北東北・青森)
・形態 単独・周回
・行程 酸ヶ湯温泉→仙人岱→八甲田大岳→上毛無岱→下毛無岱→酸ヶ湯温泉
※ 岩木山と並らぶ津軽の名峰「八甲田山」、四季折々に素晴らしい姿を披露してくれるらしいが、今回は真夏の一日、酸ヶ湯温泉をベースにゆっくりと周回した。
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7/29(日) 曇/晴
酸ヶ湯温泉(7:30)→仙人岱(8:50-9:00)→八甲田大岳(9:45-10:00)→大岳避難小屋(10:00-10:10)→上毛無岱(10:50-11:00)→下毛無岱(11:40-11:45)→酸ヶ湯温泉(12:30)
青森市内のホテルで朝を迎えた。昨夜は知人(Kちゃん)の両親が営んでいる市内の食事処でビール+酒+夕飯をご馳走になり、そんでもってホテルに戻って近くの居酒屋へ潜り込んで、青森の夜をしこたま楽しんでしまったお陰で、頭が重く寝起きが悪い。
淀んだ空気を入れ替えようと部屋の窓を開けると、青森湾が白く霞んで見えた。6時過ぎにチェックアウトして、愛車に乗
り込み、八甲田山麓の酸ヶ湯温泉を目指した。市街地を抜け、カーブの多い山岳道路に差し掛かかり、茅野高原に出ると正面に緑の裾野を広げた八甲田山がデーンと出迎えてくれた。しかし、残念なことに頂上には雲が掛かり、一番大事な部分が見えないのである。「そんなに、照れなくても良いよ。オジサンにその大事な部分を見せておくれ。」って、助平心で懇願したところで、彼女はその大事な部分を白い雲で包んだままであった。
酸ヶ湯温泉は流石に人気の温泉宿、駐車場はほぼ満杯であった。殆どが近県の車なのだが、何故か横浜ナンバーの車の両
脇に空きスペースがあった。同じ関東の好しみとばかり、この車の脇に愛車を停めて、1週間分の世帯道具の中から、今日の山に必要な物だけをザックに押し込んだ。
宿の前を通る車道沿いを歩き、二つ目の鳥居をくぐると仙人岱への登山口である。始めは、ブナや栂の入り混じった緩やかな道が続き、足慣らしには丁度良い傾斜である。周りの木々や鳥の囀りなどを楽しみながら、鼻歌気分で歩いて行くと、突然、鼻腔に硫黄臭が飛び込んできた。直ぐに樹林が切れて、登山道は沢沿いのゴツゴツした道に変わり、賽の河原と呼ばれる平坦地に出た。ここからは、傾斜も徐々に増し、先を行く登山者の姿はハッキリと見えるが、空は真っ白のままである。
沢
を吹き降ろす涼風の心地よさを感じながら、暫くは沢沿いを真っ直ぐに登って行った。周りの木々がダケカンバや這松に変わると木道が敷かれた平坦な道となり、両側に湿地が現れてきた。仙人岱の湿原である。花を終えたチングルマの群落が一面に広がっている。ご自慢の放射状の髭には霧の滴が鈍く光っていた。
微風に揺れる湿原を眺めながら歩いて行くと、丁度、中岳への分岐点で先行の壮年夫婦に追い付いた。軽い挨拶を交わしてから、木道を八甲田大岳方面へと進んだ。実は天気が良ければ、この分岐を右に折れ、中岳までピストンして八甲田大岳と高田大岳の真ん中から、その雄姿を見比べようと思っていたのだが、この真っ白な空では仕方が無い。
暫く歩くと、蓴菜(じゅんさい)が自生した綺麗な池が現れた。池中には蓴菜が生い茂り池面は淡い白霧を反射していた。少し休むことにした。周りは相変わらずの霧、風も無く空気が湿って
いる。煎餅を齧り、タバコに火を着ける。青煙が白い霧の中に消えていった。
大岳の頂上へ向けて歩き出すと、足元がゴツゴツとした道に変わった。ダケカンバの林を縫って這松混じりの適度な傾斜が続くのかと思っていたら、直ぐに視界が開け、赤茶けた岩が露出した急登に変わった。
階段状の道を尚も登って行くと、”つなぎ服”の二人連れが降りてきた。赤と青、信号機みたいな配色に思わず笑ってしまった。道は傾斜を増し、行く手に緩やかな尾根が見えてきた。あ其処がピークなのかなー?・・と半分疑いつつ登って行くと、そこが八甲田山系の最高峰、八甲田大岳の平らな頂上であった。
真っ白な頂上には誰も居なかった。一人でこの頂上をゆったり満喫しよう。晴れていれば、太平洋、日本海、津軽海峡の3海を挟んで北海道の大地、南には北東北の名だ
たる山々が一望だと、ガイドブックに載っていたが、辺りは真っ白である。これじゃー仕方ない。三角点にタッチして、一服してから降ることにした。
ザレたジグザクの道を反対側へ降って行くと、直ぐに大岳避難小屋に到着した。広場のベンチでは、数人の登山客が体を休めていた。俺もその仲間に入れてもらい、チョコレートを齧りながら一服した。すると、犬を連れて、山スキーを担いだ単独行が登って来た。へー、この時期に山スキーができるの?。でもなー、犬はどうするの?。青森の犬はスキー滑れるのかなー?。そんな訳ないよね。って馬鹿なことを考えていると、彼は犬を小屋の柱の端に繋いで、階段を登って中に入って行った。そーだ、此処をベースにスキーで遊ぶ魂胆なんだ。
休憩も程々に、上毛無岱へ向けて歩き出した。天気は相変わらずだが、降るにつれて視界が良くなってきた。頂上付近だけに雲が停滞して中腹
以下は晴れている。山では良くある天気図だが、やっぱりスッキリと晴れ渡って欲しいものだ。途中、山スキーを担いだ若者と擦れ違った。先程の”犬連れスキー野郎”の仲間なのか、息も荒くハイピッチで登って行った。
上毛無岱の湿原に出た。緑の草原に気持ち良い風が流れて行く。尾瀬の大湿原には劣るが、中々に立派なものである。木道にポクポクと靴音を残し、更に歩いて行くと、眼下に下毛無岱の湿原が見えて来た。ガイドブックで良く見かける景色だ。暫し見とれてしまった。
湿原の中ほどに、木製のテラスが設えてある。ザックを枕に仰向けになった。湿原を渡る涼風は草の匂いをたっぷりと含み、嗅覚神経を心地よく刺激している。振り向
くと八甲田の峰々には雲が掛かっている。今日は仕方ないね。こんなもんで勘弁してやろう。
下毛無岱を抜けると大きなブナが茂る樹林となった。どれもこれも立派なブナの大木である。やっぱりブナは良いねー。タバコのヤニで真っ黒になってしまった我が両胸を綺麗に浄化してくれるような気がした。ブナの林に抱かれての昼寝なんて最高なんだろうけど、寝転ぶ場所はなかった。
大木の遥か上のほうに赤テープを発見した。5、6mの高さにしっかりと結び付けてある。春山の目印なんだろうけど、八甲田の豪雪はこの時期では想像すらできない。
ブナの林が終わると熊笹の茂る道に変わった。程なくして、熊笹の間から酸ヶ湯温泉の茶色い屋根が見えて来た。今日の山も、もう直ぐ終わりである。それにしても八甲田は変化に富んだ素晴らしい山である。ブナや栂の林、ダケカンバと這松、大湿原に高山植物の群落、木道、赤岩、そして数々の温泉名湯・・・、山の魅力を全て備えている。また何時か、遊びに来ようではないか。この山の自然が残っているうちに・・・。
![]() ブナの大木の遥か高みに赤テープが |
![]() 酸ヶ湯温泉の全景 |