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五頭山は、その名前が示すように五つの頭を持つ山である。
山の姿形、特に山頂(ピーク)の数に因んだ山は日本各地に幾つも存在する。
双子山、三頭山、七ヶ岳、八ヶ岳、八峰・・・など、五頭山もその一つである。
また、全国の至る所に“弘法大師”の伝説が残っているが、
五頭山も弘法大師が開山したとの言い伝えがあり、麓の五頭温泉は大師が開いた県内最古の温泉で、
歴史を誇る名湯とのことである。
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二王子神社の臨時駐車場

左がスキー場コース、直進が三ノ峰コース |
昨夜は、道の駅「阿賀の里」に泊まった。
同宿の車は、案外と少なくたったの5台だった。
朝早くから行動を起こすのは、山屋の常。動き出しは俺が一番だった。
実は、事前の計画では「粟ヶ岳」に登る予定だったが、今日は昼過ぎから雨の予報。しかも、ザーザー降りらしい。
山頂までの往復時間を考えると、びしょ濡れになるのは間違いない。
雨の中を歩くのは面白くないし、このまま帰ってしまうのも勿体ない。
出てきた結論は、昼頃に下山できる近くの山!ってことで、急きょ「五頭山」に登ることにした。
地図を用意してこなかったが、その問題をスマホが解決してくれた。
山に入ってしまうと圏外になるので、アンテナびんびんの街中で登山地図をダウンロードした。
応急措置とは言え、こんな使い方も有るんだなー!
最短で往復できる“三ノ峰コース”の登山口に到着した。
時計は7時を廻っているのに、俺が一番着である。今日は休日だよー。
雨の予報でも一台もいないとは、何となく寂しい。
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三ノ峰コースの登山口(どんぐりの森) |
“どんぐりの森”と言う施設(・・と言っても朽ち掛けたキャンプ場)から登り出した。
立派な看板から察すると、登山道も綺麗に整備されているに違いない。
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ミツバツツジが綺麗な登山道 |
登り始めから急な階段状の道が続いたが、ここは県立の自然公園。要所には手摺のロープがしっかりと張られていた。
ミツバツツジが綺麗に咲き、ブナの若葉が初々しい。下の方では水音も聞こえる。春の山は、こんな具合に清々しい風情を与えてくれる。
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ウッドチップが敷かれた道 |
急な傾斜が終わると、ウッドチップが敷き詰められた平坦な道に変わった。
流石に県立の自然公園、東京都の三頭山もこんな感じだったなー。
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凹道を登る。ブナが綺麗だ。 |
再び傾斜が増してくると、これが正真正銘の登山道って感じになってきた。
“人が歩く跡が道になる”(当たり前だよね)と言うが、人の体重と雨の流れで凹状の道に変わった。
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長助清水の休憩所 |
ミズナラの木々が目立ってくると、“長助清水”に着いた。
ワンピッチも経っていないが、ベンチもあるし休憩しよう。
ハエがブンブン飛び回っている。これが本当の“五月蠅い”奴らである。
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三ノ峰が見えた |
三ノ峰の手前から雪道となった。
1000mにも満たない低山だが、流石に豪雪の山だなー。
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三ノ峰に着いた

避難小屋

屋内は綺麗に整頓されて何とストーブまであった。 |
最初のピークである三ノ峰に着いた。
視界はなく、小さな広場には赤い布を纏った不動明王の石像が祭られていた。
直ぐ先に避難小屋があった。「小屋は覗いてみる」を信条としている俺は、早速に扉を開けてみた。
品疎な外見と裏腹に屋内は小奇麗に整頓され、何と!石油ストーブや鍋釜まで備わっていた。
石油ストーブと鍋釜が刺激になった訳ではないと思うが、急に下腹部が渋り出した。
我慢できそうもないので、避難小屋の裏手に回り、林の中を掻き分けて用を済ませた。勿論、排泄物はストックで穴を掘り綺麗に処理した。
これまで数々の避難小屋を見てきたが、裏手に回ると大体が“糞だらけ”である。もう少し我慢して林の中で用を足せないかなー。
俺も何度か“キジ打ち”をしたが、人目に付かない林の中に入り込み穴を掘って処理している。
こうした山のマナーが受け継がれないのが、悲しい現実である。
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ブッシュの中に入る |
糞の話になってしまってので、山に戻そう。
三ノ峰から下って二ノ峰に登り返すが、夏道は完全に消えて西側のブッシュの中に薄い靴跡が残っていた。
そう言えば、ここまで誰とも出逢っていない。 何んと静かな山なんだろう。薙ぎ倒された灌木を跨ぎ、小枝を払い除けながら進んで行った。
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三ノ峰と下越平野 |
二ノ峰のテッペンからは、三ノ峰越しに下越の田園が見えた。
空は曇天だが、視界はまずまずであった。
一ノ峰への登りとなった。夏道とブッシュが交互になった斜面を登って行った。
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一ノ峰の石碑とお地蔵様

二ノ峰を振り返る

菱ヶ岳が見事だ |
一ノ峰の頂上には、信仰の山らしく“五頭龍神”と書かれた大きな石碑と地蔵菩薩が祭られていた。
ここからの視界は抜群で、西に菱ヶ岳が聳え、北に五頭本峰が見えた。俺は、景色が良い場所では休むことを常としている。
しかも、此処は弘法大師が開山した聖地である。
先ずは、お地蔵様に手を合わせ「南無大師遍照金剛」の真言を三回唱えてから、腰を降ろした。
最近は、女房と一緒に寺院巡りに励んでいるので、こう言った真言が自然と出てくるようになった。
これも歳の成せる技かなー?
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五頭山が見えた(左上のピーク) |
五頭本峰の方向から女性の声が聞こえてきた。
女性の声は良く響き渡る。
その理由は、男の声より周波数が高く、山は下界に比べ気圧が低いと言う物理の法則は理解できるが、静かな山を満喫している時には勘弁して欲しい。
一ノ峰を超えたところで、声の発信源が歩いているのが見えた。
どうやら3人組で、五頭の本峰へ向かっているらしい。
前方には、残雪を纏った本峰と昨日登った二王子岳、その向こうに飯豊の山々が連なって見えた。
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三の又(左が五頭山、右が菱ヶ岳) |
三ノ又で菱ヶ岳からの道と合流し、本峰へと向かった。
前を行く登山者もなく、彼女たちは本峰を踏まずに菱ヶ岳へ向かったのかなー。
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地味な五頭山の頂上

二王子岳、飯豊山の景色 |
細い尾根を通って五頭本峰に着いた。
北側と西側の景色が良く、昨日の登った二王子岳と今日登るはずだった粟ヶ岳が綺麗に見えた。
細木に手書きの山名板が括り付けてあるだけの地味な山頂。三角点の表示があったが、雪の下に埋もれていた。
山頂の雰囲気は、昨日の二王子岳とは雲泥の差である。
長居は無用。早々に引き揚げることにした。
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一ノ峰 |
誰も居ない五頭山の山頂を後にして、一ノ峰を登り返した。
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下山途中で何組かの登山者と擦れ違う

長助清水まで戻ってきた |
長助清水まで戻って一休みした。
ここまで、何組かの登山客と擦れ違ったが、その中にこの時期の山を馬鹿にした二人連れと出逢った。
二人の若者は、いずれも超軽装で一人は半ズボンに素足のサンダル履き、ザックも持たずに手ぶらである。
「その格好で登るの?」と俺。
『これじゃー、無理っすかねー。』と彼。
「三ノ峰から先は雪だよ。サンダルじゃー、無理じゃないかなー!」
『ここまで来たんだから、行けるところまで行ってみます。』
「痛い目に合わないように、気をつけなよ。」
二十歳前後の若者。体力的には問題ないだろうが、痛い目に合わないと分からない年代。彼らにとっては良い薬になるだろう。
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無事に下山 |
登山口まで戻ってきた。今日の山も終わった。
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