安達太良山

・期間  2004年2月21日(土)
・山域  安達太良山(南東北)
・形態  単独・日帰り 周回コース
・行程  あだたらスキー場→勢至平→くろがね小屋→安達太良山頂→あだたらスキー場


昨冬の悔しさを晴らそうと、真白き安達太良山に登ることにした。明日の天気は下り坂、しかも「くろがね小屋」は超混雑で小屋泊しても楽しいことはない。日帰りの強行軍で念願の山頂に立った。

2/21(土) 晴れ
 
自宅(4:00)→あだたら高原スキー場(8:30-9:15)→勢至平(10:30-10:40)→くろがね小屋(11:10-11:50)→峰の辻(12:30-12:40)→安達太良山頂(13:10)→薬師岳展望台(14:20)→あだたら高原スキー場(15:00)→自宅(21:30)
 
土曜日の天気は上々だが、日曜からは下り坂、何としても土曜のう勢至平(左の突起が安達太良山頂)ちに頂上を踏みたい。くろがね小屋へ泊り客の様子を尋ねると「廊下で寝て頂く事になります。」との返事、『エーイ、こうなったら日帰りだ。』ってことで、朝の3時半に目覚時計をセットした。
 夜が明けぬ東北自動車道を簸たすら北へ進んで、記憶のある道を安達太良スキー場へと登って行った。今日は土曜日、駐車場の半分以上が先客で埋まっていた。天気は上々、太陽に照らされたゲレンデの白さが目に眩しく飛び込んでくる。ゴンドラを使って薬師岳展望台からの逆周りも考えたが、運良く??ゴンドラは動いていない。『そうだ、俺は山を登りに来たんだモンね。登りを楽しんで、辛い下りで楽しよう!!。』ってことで、サングラスとWストックで武装してスキー場脇の林道くろがね小屋(左上のピークが矢筈森)を歩き出した。道は良く踏まれており、ノーアイゼンでも快適だ。今年は暖冬と言うが、確かに暖かい。周りのブナも春の芽吹きの準備を着々と進めているいる感じである。暫くは急な登りを黙々と歩を進めた。

 ”勢至平”で視界が開けると、昨冬と同じで西風が強くなってきた。ただ、決定的な違いはこの晴天だ。安達太良山から矢筈森を経て鉄山の稜線、北側の箕輪山まで暖かな太陽を浴びて青空に白く輝いている。
 単独行の女性に追い付いた。彼女はスノーシューを装着して、ショートカットコースで頂上を目指して歩き出した。山スキーの二人組みもザックに括り付けたスキーにシールを装着して、スイスイと彼女を追い抜いて行った。
 時計は10時30分を指している。時間はタップリ残っているので、俺は予定どおりに「くろがね小屋」経由で頂上を目指すことにして、また一人で歩き出した。昨冬の膝までのラッセルが嘘のように、白い一筋のラインが続いている。最後の支尾根を北側に廻り込むと見覚えのある黒と茶色の「くろがね小屋」が見えてきた。
 
小屋では先客が10人ほど、ストーブを囲んでビールを美味しそうに飲んでいる。俺もザックを降ろして、テーブルの片隅を拝借してビール片手に昼飯の準備に掛かった。向かい側の中年男性に声を掛けられた。「一人で、どちらからですか?」と明らかな東北弁、『今朝、千葉を発ってこれから頂上へ登って日帰りです。』、「随分な強行軍ですね。」と東北弁、『明日の天気が悪いので、今日のうちに登らないと来た意味がないので・・』、「私は近所なので太陽が昇ってから出て来ました。頂上は良い景色ですが、風が強いですよ。確かに明日まで居座る意味ないですね。(笑)」と標準語を意識した軽めの東北弁、『お日様の登るのを見てから来れるんだから、近所の人が羨ましいですよ。(笑)』って、話してる間にコッヘルのお湯が沸き、山では定番のラーメン作りの準備が整った。
 「気を付けていってらしゃい。」と軽めの東北弁を残して、彼は小屋を後に勢至平へと降って行った。入れ替わりに、明らかに還暦を過ぎた標準語が騒々しい男女混成の10人パーティがドヤドヤと入ってきた。小屋の親父に今日泊ま峰の辻手前からの安達太良山の頂上るから荷物を置いて頂上をピストンすると言う。親父は冬山なので万一のため荷物を持って行けと言う。超還暦パーティは、親父の忠告を無視して玄関付近で荷解きを始めた。親父は呆れて「どーなっても知らねーよ。」と東北弁を返した。美味しいはずのラーメンが少し不味くなった。超還暦パーティから逃げるように急いで身支度を整えて、小屋を後にした。
 玄関先でアイゼンを装着、雪煙の舞う尾根を頂上へ向けて出発した。西風を真正面に受けての急登が続く。
 人間、一人だと正直で??峰と雪の斜面謙虚なものだが、集団になると崩れてしまうものらしい。若い集団も騒々しくて困るが、年配集団はこれに頑固が加わるのでどうしようもない。要はリーダー次第なのだが、あのパーテイのリーダーでは何ともならんだろうな・・・、なんて考えながら歩いていると、雪煙と共に突風が襲って来た。両足を広げて上半身を折り、耐風姿勢でジッと我慢する。雪煙が通り過ぎ顔を上げると正面に目指す安達太良山の頂上が光っていた。北側を見上げると、何ともアルペン風の景色、思わずカメラに収めた。
 此処からは左斜面のトラバースが続く。傾斜は30度位、アイゼンをしっかり利かせて一歩一歩確実に進んで行った。
 鞍部から最後の登り峰の辻に到着したが、小休止しようにも強風で休む場所が無い。仕方なく少し降った鞍部で腰を下ろし煎餅みたいにペチャンコになったアンパンをザックから取り出してパクついた。タバコを吸おうにもライターの火が付かない。見上げると青空に薄い雲が西から東へ流れて行く。タバコは下山までお預けのようである。
 頂上を極めて「くろがね小屋」へ向かう幾つものパーティとすれ違う。誰もが満足な表情をしている。これらのパーティが全員あの小屋に泊まると思うと、日帰り速攻の強行軍が正解かも知れない。最後の登りを我慢してヤッと乳首(頂上)の肩に到着した。
 安達太良山を乳首山とは、良く名付けたものである。確かにそう思って遠くから眺めると、女性の豊な乳房(B又はCカップかな?)に乳首がチョコと乗っかった感じに見える。頂上のエビの尻尾そーすると、俺が今居る場所が乳輪のあたり、頂上までの高低差が10m、ガリバーが女性だったら、俺は差し詰め彼女の最もデリケートな部分をアイゼンの爪を立ててガジガシと極めようとしている。13時10分、氷結した乳首への道を右回りで螺旋状に登ると360度の視界が開けた。
 北に箕輪山、遠くに吾妻山が緩やかな傾斜を広げている。西には会津の象徴である磐梯山が逆光に白く霞んでいる。南には二本松の市街地が俯瞰でき、東北自動車道が一直線に伸びている。それにしても、もの凄い西風である。風速20mは軽く超えているであろうか、磐梯山が薄く霞んでいる何かに掴っていないと倒れそうである。
 頂上の停滞時間は5分で終わったが、ウルトラマンよりマシである。写真も撮ったし、景色も眺めたしで良しとしよう。
 再び乳輪へ降って、風を避けて岩陰で一休みした。試しにライターを擦ったが、火花がパチパチと飛ぶだけで、オレンジの炎は現れない。好きなタバコもお預け、仕方なく煎餅をバリバリと齧った。遥か下方に薬師岳展望台のロープウェイ駅が見える。「あそこまで1時間かー、もう下りてしまうんだなー、傾斜が緩いので膝は心配ないだろうが・・」なんて、採り止めも無いことを考えていると、少し下の岩陰で休んでいた二人組がスキーを履いて滑降の準備をしていた。そーだ、此処は山スキーのメッカである。ゲレンデスキーしか出来ない俺には逆立ちしても無理だが、歩いて1時間の斜面を10分足らずで滑り降りてしまうんだから、ホンとに悔しいと言うか羨ましい限りである。スキー組が”シャー”と音を立てて滑り降りた後をザクザクとアイゼンを利かせて下って行く。彼等は”アッ”と言う間に雪煙を残して消えて行った。ツボ足とスキーの違いを嘆いても仕方ない。この歳から山スキーでも始めようか!!、なんて・・・。
 やがて雪紋の綺麗な緩斜面となった。スキーのトレースを外してバージンスノーにアイゼンの爪痕をキッチリと残して、一人でトボトボと下って行った。